多胞腎臓患者の血圧を下げるのに使われる降圧剤

 多胞腎臓は腎臓の中に通っている尿細管という管が肥大化し、腎臓内に多数の嚢胞が形成される病気です。発病してしばらくは自覚症状が出ませんが、病気が進行すると血尿や腹痛などの症状が現れ、やがて腎機能低下や尿路結石を発症することが多いです。この病気は遺伝子疾患であり、今のところ抜本的な治療法はなく、対症療法に頼るしかないのが現状です。
 また多胞腎臓では高血圧を合併する例がよくあります。これは、人体の血圧が正常な状態にあるかは、腎臓を通過する血液の量で判断されているからだと考えられています。多胞腎臓を発症して腎機能が低下すると腎臓を通過する血液の量が減り、その結果「血圧が低すぎる」という誤った情報がホメオスタシスの中枢に発信されてしまうのです。このため多胞腎臓の患者では、明確な自覚症状が出る前から血圧が高くなっており、脳出血など高血圧が原因の病気の発症率も高くなっています。
 多胞腎臓患者の高血圧の治療には、アンギオテンシン阻害剤という系統の降圧剤が使われることが多いです。アンギオテンシンとは血圧の調節に関わるホルモンの一つで、このホルモンの血中濃度が高くなると、身体にナトリウムが溜まりやすくなって血圧が上がります。アンギオテンシン阻害剤系の降圧剤は、このホルモンの作用を阻害することで、血圧を下げるわけです。なお降圧剤としてはほかに、利尿剤やカルシウム拮抗剤などがありますが、これらの薬は腎機能を低下させることがあるので、多胞腎臓の患者には使用しないほうがいいとされています。
 なお腎機能の低下に対しては、トルバプタンという薬が処方されます。この薬はバソプレシンというホルモンの作用を阻害することで、嚢胞の肥大を抑える作用があります。ただし、症状の進行を遅らせるだけで抜本的な治療にはなりません。